最後
「では、これで最後の勝負ですね、頑張って下さい」
ディーラーは心にも無い事をにこやかにシンに言った。その光景をシンの相手の後ろで、椅子に座ってふんぞり返っているカジノのオーナーが、ほおつえ頬杖を突いてにやつきながら見ていた。
クレアは激怒した。多分、シンは昨日の自分の話を聞いて、恐らくは一度もやったことがないポーカーで勝負を受けたのだ。自分の負け分を取り返す為に…
シンは一生懸命やっているのに、相手のディーラーがグルでは勝ち目が無いではないかっ!
オーナーの急所でも蹴り上げてやらなければ気がすまない。
クレアは人込みを掻き分け、オーナーの下に歩み寄ろうとした。
しかし、その腕をレイがつかんだ。
「…どこに行く気だ?」
クレアは苛正しそうに、
「決まってるでしょ。あのクソオーナーのとこよ」
小声でレイの方は振り返らずに囁く。
「…シンはお前の為にこの喧嘩を買ったんだ…最後まで見届けていけ…」
レイがそう言った時にはもうカードは配り終えていた。
(ここで大金を巻き上げる)
ディーラーはこれまで、シンにはそこそこ強いカードも渡してある。そして、今回も弱気なシンに、何とかガンガン上積みしてもらおうと、エースのスリーカードというかなり強い手札を渡した。
もちろん、相手には7のフォーカードという、シンの上をいくカードを渡したが…
「さて、ではカードの交換は…」
「僕は全部交換して」
シンはあっさりそう言った。
(スリーカードを捨てるなんて何を考えているんだ?)
ディーラーも、シンの相手も訳がわからない、といった表情だ。
シンに五枚のカードを配る。
「こちらはこのままでいい」
この相手の言葉に場内が沸き起こった。
だがシンが五枚の手札を見て微笑んだのを、シンの相手もディーラーも見逃さなかった。
「では、賭け金は…」
「200ガルド上積みで」