冗談
「…冗談じゃないわよ…」
クレアは怒りのこもった口調で呟いた。
「あたしの人生はあたしのものよっ!誰の好きにもさせないわっ!」
クレアは手紙を真っ二つに裂いた。
素早く荷物をまとめて、シンとレイのあとを追う為に部屋の外に出る。
だが宿の入り口からは人々の悲鳴と、怒号が響き渡っていた。
窓から外の様子を見てみると。
逃げ惑う人々を切り捨てる男達。
様々な建物を、あたかも玩具のように破壊していく巨大な重火器。
忘れもしない。
三年前のあの事件を。
『クロノス』によるホロコースト大量虐殺。
それが、今、自分の目の前で起こっている。
『クロノス』の装備一式を身に纏い、今、剣を宿の主人に振り下ろそうとしている男に、階段から飛び降りざまに、顔面に飛び蹴りを浴びせる。男は派手に吹っ飛んだ。
「あんた、大丈夫!?」
宿の主人に向かって叫ぶクレア。主人は頭をぶんぶん縦に振った。
「なら、とっととここから逃げなさいっ!」
クレアに飛び蹴りを浴びせられた男は、むっくりと不気味に立ち上がる。
男の顔を蹴った時の感触は人間のものではなかった。まるで鉄でも蹴ったかのような感触だ。
『クロノス』の『生体兵器』、『サイボーグ』。
普通に殴る、蹴る、等の打撃ではこの相手を倒すことはできそうにない。
殺すつもりで攻撃を仕掛けなければこちらが死ぬ。
クレアはショートソードを腰から抜いた。柄に埋め込まれたマジックストーンが蒼く輝き出す。