イカサマ
(いや、奴や、周りの人間もイカサマをしている様子はない)
ディーラーは視線でそう訴えた。
相手はしばらく時間を置いて、
「…もう500ガルド追加だ」
ディーラーに告げた。
ところが、シンはそんなことはそっちのけでクレアに何事か囁いていた。
「…あんた、本気?」
クレアはシンが正気かどうか疑った。
「大丈夫、絶対勝てる。すんごくいい手札なんだ」
シンが自信満々で耳打ちする声をディーラーは聞き取った。
そんなシンに対しクレアは、
「まあ、弱気なあんたがそこまで言うんだから、相当いい手札なのね…わかったわ。あとで勝金半分よこしなさいよ」
「OK」
シンはクレアからある物を受け取り、それをポーカーの台に乗せた。
「この剣を賭けます」
その剣を見てオーナーは興奮した。
剣自体はどこにでもある二束三文の剣だ。しかし、その剣の柄に埋め込まれている品物に、オーナーは目を奪われた。
「このマジックストーンは、5000ガルドはしますよね?」
シンの確認にディーラーは頷くしかなかった。そのマジックストーンはそれ程見事なものであった。倍の値段を提示してもいいくらいだ。
ここまでくると、ディーラーの心の中にも、ひょっとして自分はミスをしてしまったのでは、という考えが頭をよぎった。がそれは一瞬の事。万一、失敗していても、7のフォーカードを上回る手札でなければ勝てないのだ。そんな確率は皆無に等しい。